チョイとお邪魔します。文京区本郷キャンパスをぶら散歩
・龍岡門はバスやタクシーが行き交う大通りゲート
東京都文京区にあるる東京大学は、本郷地区で本郷・弥生・浅野の3つのキャンパスに分かれています。なかでも、本郷キャンパスの南部にある龍岡門は、人はもちろんバスやタクシーが行き交わい常時開放されています。さらに医学部付属病院が隣接することから車で来院する際のゲートでもあります。以前は扉が付いていたようですが、門柱間を広げる工事の際撤去され、365日24時間車両や人の出入りがある等の理由もあり、現在では門柱だけとなっています。龍岡名は、現在の湯島4丁目の旧地名(龍岡町)に由来し、徳川家康の四天王の一人榊原康政の屋敷など武家屋敷があった地域です。
・東大病院旧外来診療所の天井壁画
龍岡門からバス通りを道なりに下っていくと左側には薬学系研究棟が建ち並び、十字路に差し掛かると右側には医学部付属病院が見えてきます。4月末とあって外来診療棟前には、大きな鯉のぼりが尾を振って泳いでいました。近代化した新病棟の屋上には東大病院のコミュニケーションマークと世界保健機関のロゴマークがレリーフされ、災害拠点病院としてのヘリポートが設置されています。さらに通りを北に進むと病院・管理・研究棟と病院・第一研究棟が見えてきます。それらは「内田ゴシック」と呼ばれる建物の一つです。かつて、関東大震災によって倒壊、焼失した建物の復興計画として、内田祥三(工学部教授、建築家、のちの総長)を中心に巨大な建物が建設されていきました。これらは芸術的要素を取り入れたゴシック様式を基調とした建物として「内田ゴシック」と称され東大キャンパスの象徴的建物となりました。バス通り沿いの病院・研究棟の最上階には大きなレリーフがあり、北には診療・治療・予防を誓う壁画や南には長崎への医学の伝来を記念する壁画が彫刻されています。また、管理研究棟は以前外来診療所という名称で、各科の外来があった場所でもありました。この旧外来診療所アーケードの天井には、寺崎武夫(東京藝術大学出身の壁画家)によって描かれた壁画があり、現在では雨風や陽にあたりほとんどが確認できないほどになっています。わずかに、南側のアーケードに描かれた「降魔の剣を抱く神」をかすかに見ることができます。
・三四郎池と安田講堂の別名
さらに、病院・管理・研究棟の真向かいとなるバス通りの左側には、大きなグラウンドとともに大学内の運動施設となる御殿下記念館があり、曲がり角には3つのアーチが連続する入り口になっています。そこからバス通りをそれて左側に曲がると、やや登坂になる5叉路の通りにでます。それを直進すると左側には高木が繁り、高木の間にある道を下ると池へとたどり着きました。現在では、夏目漱石の「三四郎」の舞台になったことから三四郎池と呼ばれています。かつて本郷キャンパスの一部は加賀藩前田家の上屋敷でした。三代目藩主前田利常の時に庭園が整備され、庭園を育徳園とし池を心の字をかたどった心字池といいました。そんな池のほとりに佇むと・・・ここでも大きな錦鯉が尾を振り泳いでいました。先ほどの五叉路に戻り、斜め右側に歩いていくと安田講堂が見えてきます。講堂は、安田財閥の安田善次郎の寄付によって建設されました。但し、匿名を条件で寄付したしたことから正式名称は東京大学大講堂といいます。その後、これらの事情は善次郎氏死後に知られるようになり、一般に安田講堂と呼ばれるようになりました。また、過去の紛争事件により建物は被害にあいましたが、安田財閥の寄付によって修復されています。力強い見事な大講堂の正面に立ち、振り返った先には、正門と安田講堂を結ぶ銀杏並木が・・・東京大学のシンボルとなる象徴的な景観です。
・鉄門の由来
再びバス通りに戻り、鯉のぼりがあった病院中央診療棟まで行くと、目の前には出入り口となる鉄門があります。鉄門は、東京大学医学部の前身であった種痘所が鉄の門扉であったことに由来します。もともと本郷キャンパスの正門は鉄門でしたが、民有地が構内に取り込まれたため当所南館研究棟付近にあった鉄門は撤去されます。その後、東京大学医学部の創立150周年を記念し以前の場所から東側に鉄門は再建されました。
・帰り道は無縁坂へ
鉄門を出て左側に行くと長い坂道が続きます。森鴎外の「雁」に登場する無縁坂です。「南側は岩崎の邸であったが・・・苔蒸した石と石の間から」の文面に見る石垣は、今もその姿を残しています。下った先は不忍通りに突き当たります。右に曲がれば湯島へ、信号を渡り不忍の池を通り抜ければ上野です。ノスタルジックな想いを心にぶらり、ぶらりと帰りましょう。
・おわりに
校内を見学する際15名以上の団体の場合は申し込みが必要です。詳細等については龍岡門入ってすぐ右側に広報センターがあります。少人数やひとりでこちらの門からあちらの門へ出入りしたり、キャンパス内の食堂やレストランを利用することができます。そうはいっても大学の私有地であることをご理解の上、散歩の際は構内の注意事項を必ず守りましょう。