五月晴れ、文京区本郷から小石川をぶら散歩

・東京大学から裏通りをぬけて

 東京大学の正門から信号を渡り、古書店脇の路地を進むと本郷6丁目エリアです。まもなくして旧名称となる森川町の案内板がありました。そもそも森川町とは、岡崎藩主本多家の屋敷と先手組屋敷を併せて森川町としていたそうです。先手組には森川金右衛門という頭が居り中山道の警備に当たっていました。なかでも組に従事する与力同心などには親族が多く、人馬を休ませる馬建場があったことから「森川宿」と言われていたようです。一件古そうな木造の家に当時の風情を感じながら二又に別れた道を左に進んで行きます。すると急勾配の坂が目前に勾配14%の標識がある新坂です。文京区には「新坂」と呼ばれる坂が6箇所あるようですが、その見事な傾斜に驚きながら坂を下ると大通りに出ました。右に向かえば言問通りで本郷弥生の交差点から台東区の隅田川にかかる言問橋に至ります。右には行かず左に曲がるとまもなく「菊坂下」の交差点に当たります。さらに進み白山通りと交差する「西片」の交差点にでました。この先からは小石川エリアです。本郷台と小石川台の谷間となる区域で、そのまま直進すると「こんにゃくえんま前」の交差点に突き当り、目の前には「こんにゃくゑんま 源覚寺」の石碑が見えてきました。

・こんにゃくゑんま様に会える源覚寺

 浄土宗常光山源覚寺は、寛永元(1624)年定誉隋波上人により現在地の小石川2丁目に開創され、特に徳川秀忠、家光からの信仰を得ていました。江戸時代の度重なる大火の折、こんにゃくえんま像や本尊(阿弥陀三尊)は難を逃れ、さらにその後の関東大震災や第二次世界大戦からの災害も免れたパワースポットです。老朽化に伴い本堂は1979年、えんま堂は2003年に再建されています。

・こんにゃくえんま様の由来

 宝暦(1751~64)年の頃、目を患ったお婆さんが眼病治癒を日々祈願していたところ、満願の夜、閻魔大王が現れ「私の片目をあげますよ」と告げられ、その後、お婆さんの目はすみやかに治りました。それ以来、お婆さんは感謝の気持ちとして好物の「こんにゃく」を断って、閻魔様に供えた続けたといわれています。それにより閻魔王像は身代わり閻魔の名で今でも人々からの信仰を集めています。現在もお堂には、数多くの蒟蒻がお供えされていました。えんま堂の奥手には、塩地蔵様もいらして歯痛緩和のご利益があるそうです。ところで、お婆さん好物の蒟蒻ですが、サトイモ科の多年草植物です。水はけのよい、山の傾斜などで栽培されています。推測ですが、もともと小石川村は広大な草原地でほとんどがお百姓さんの持ち物でした。小石川台地と小石川谷地の傾斜地は、蒟蒻栽培に適した地域だったかもと思いました。お目が治癒したお婆さんも蒟蒻玉から灰汁などを用いて手作りしたコンニャクが大好きだったのでしょう。阿助さんも幼少のころ、祖母が作った出来立ての刺身蒟蒻に舌鼓してました。閻魔様もさぞかしおいしい蒟蒻を頂いて感激したのでは・・・。

・源覚寺から裏通りをぬけて

 源覚寺脇の路地を入り突き当りを右に曲がり、一本目の路地を左に進むとなだらかなのぼり坂がありました。L字型に曲がった角付近には「六角坂」の標識があります。江戸切絵図(本郷湯島絵図に記載)によると、この角付近に六角備前守の屋敷があったことがわかり、坂の由来は高家六角の屋敷前にある坂ということで名付けられています。また、現在真向かいの住宅壁面には大きな猫の顔が描かれており、通称「猫ビル」と言われている評論家立花隆氏の事務所がありました。この角からの坂はかなりの急勾配でしたが、上り切った右手には上富坂教会があり、裏手にまわると煉瓦つくりに緑の屋根といった渋い佇まいを拝見しました。猫ビルに続き閑静な住宅街で興味深い風景です。また、六角坂は上餌差町より伝通院の裏門に出る坂でもあったようで、餌差町(現在の小石川1.2丁目)とは、慶長年間(1596~1615)鷹狩りの鷹の餌になる小鳥を刺し捕らえることを司る御餌差衆の屋敷がおかれていた所(江戸切絵図、本郷湯島絵図にエサシの記載)であったとか、エライお役目があったようで加藤伊織組餌差衆59人の拝領地となり町屋が作られていたようです。なるほど!広大な大草原の小石川村に多くの仏閣が集積し、その周りに町家が形成された小石川台地となり今に至っています。

・六角坂から富坂下へ

 なだらかな路地を直進すると春日通りに出ました。真向かいには中央大学があります。右に行くと富坂上交差点、左に行くと富坂下交差点です。横断歩道には名称はありませんが、富坂中ほどの位置になります。江戸時代、富坂はこの地域には鳶が多く飛んでいたことから古くは「鳶坂」と呼ばれていました。それが時の流れとともに「富坂」に転じたとされています。横断歩道を渡り、左富坂下へ下りていきます。

・帰り道

 富坂下交差点まで下りる前に、「後楽園」の駅までの近道となる礫川公園があります。イタリアルネッサンス様式を参考にしたカスケードがある公園は駅近のオアシスです。ベンチに座りお茶茶を一杯、五月晴れ汗をかきかきすっきり!本日はここまで。

礫川公園

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